ジャーナル#12 ルッキズム
― ルッキズムと「整える」ことの本質 ―
毎年3月8日は、女性の権利と社会参画を促進する「国際女性デー」です。世界中でジェンダー平等に向けた議論が活発化する日です。
私たちコムニコスは、ヘアメイクの監修をはじめ、組織における「身だしなみガイドライン」の策定支援、さらには自社開発のジェンダーレスコスメの展開など、多角的に「外見と社会の在り方」に向き合っています。
そんな「美容」や「ヘアメイク」を生業にしている私たちが、国際女性デーにちなみ、外見を理由にした差別や外見を重視する価値観「ルッキズム(外見至上主義)」について、深掘りしてみようと思います。
目次
- ① ルッキズムとは何か
- ② ルッキズムと職場の身だしなみ
- ③ ビジネスシーンで「整える」こと、プライベートで「飾る」こと
- ④ ルッキズムとジェンダーレスコスメ
- ⑤ 「整える」ことの本質
① ルッキズムとは何か

そもそも「ルッキズム」という言葉は、1978年、アメリカのワシントンポストに掲載された記事が最初とされています。太っているだけで職場で不当な扱いを受けたり、過度な減量を強いられ摂食障害を患った人々を報じたもので、体型差別を指す言葉として使われたのが始まりです。その後、顔の造形など外見全般に広く使われるようになりました。日本でこの言葉が広まったのはここ数年のことですが、外見で人を評価する問題意識そのものは、決して新しいものではありません。
日本の10代女性の93%が「容姿に自信がない」と回答した調査があります(14カ国比較調査)。14カ国の中でもっとも高い数字です。また、34.9%の人がルッキズムによる差別や不当な扱いを経験しており、もっとも多かった場所は学校(65.9%)、次いで職場(42.7%)でした。
ルッキズムを助長する原因として、SNSやテレビが挙げられます。SNSでのいいねの数などで、可視化され、それが良いとして加速していく。フィルターをかけた画像が当たり前になった今、知らず知らず「きれいな顔」「こうあるべき」像が刷り込まれていく。そんな時代になったと感じます。
一方世界では、すでに法律レベルで対策が進んでいます。アメリカの一部の州では外見差別を禁止する条例が制定され、イスラエルでは2012年に加工写真の表示義務化とモデルのBMI最低基準(18.5以上)を法制化。フランスでも2017年から、体型を加工した商業写真に「加工写真」と表示することが義務付けられており、違反には禁固刑と罰金が科せられます。修正された広告画像を見続けることで摂食障害のリスクが高まるという研究が背景にあり、公衆衛生上の問題として捉えられているのです。
また、世界各地で長く続いてきたミスコンテストも、廃止や評価基準の見直しが進んでいます。容姿を競う形式そのものへの問い直しが、じわじわと広がっています。日本でのルッキズムへの認識もここ数年で急速に高まっていますが、法的な対応という意味では、まだ世界に遅れをとっている状況です。
出典元:「ダヴによる少女たちの美と自己肯定感に関する世界調査」ユニリーバ・ジャパン、2017年
② ルッキズムと職場の身だしなみ

企業研修の現場でよく感じるのが、身だしなみの基準の「差」です。女性にはメイクが「当たり前」とされ、マニュアルに明記されているケースも少なくありませんが、男性へのヘアメイク指導はいまだ例外的です。「清潔感」という言葉は一見フラットに聞こえますが、性別で異なる基準が当然のように設けられていることがあります。
「女性だからメイクをするのが当たり前」という空気は、気づかないうちに人を縛っています。第一印象を大切にすることと、特定の人たちに特定の外見を求めることは、分けて考えなければいけません。「信頼感のある身だしなみ」の選択肢は、もっと広くて良いはずです。
③ ビジネスシーンで「整える」こと、プライベートで「飾る」こと

ヘアメイク監修や身だしなみ研修の現場では、二極化した状況をよく目にします。
一方は、SNSで流行りのメイクをそのまま職場に持ち込むケース。涙袋のラメ、下がり眉、白いベースメイク……プライベートでは素敵に見えるかもしれませんが、接客の場でお客様に違和感を与えてしまうことがある。
もう一方は、「ナチュラル志向」と言いながら、ほぼすっぴんで接客するケース。肌の色ムラや赤みも眉も整えないまま接客をしているケース。
「体調が悪いのでは」と心配されて、本人が気づいていないまま印象を損ねていることもあります。さらには、企業ブランドの名を汚しかねません。
この両極に共通しているのは、「相手にどう見えるか」という視点が抜けていることです。自分の好きなメイクをする自由も、ノーメイクでいたい気持ちも、理解できます。しかし、ビジネスの場では、自分の心地よさと同じくらい、相手への配慮が必要不可欠です。
④ ルッキズムとジェンダーレスコスメ

コムニコスのミッションは「すべての人に絆を与える」、ビジョンは「ヘアメイクを通して年齢・国境・性別と垣根のない世の中に」。そのビジョンを体現するために生まれたのが、ジェンダーレスコスメブランドCOMMUNICOSです。プロのヘアメイクアーティストとして男女問わずさまざまな年代・職業の方と向き合ってきた経験から生まれた、「誰でも、どんな人も使えるコスメ」。短時間で、簡単に、ちょっとした自信のきっかけになる。そういうものを作りたかった、というのが原点です。
メンズコスメ市場の規模は2024年に約1,655億円まで拡大したと報じられています。
スキンケアだけでなくメイクアップへの関心も着実に広がり、社会は確実に変化しています。
性別に関わらず、肌を整えることで少し自信が持てた方を多く見てきました。鏡を見て「今日はいい感じだな」と思える朝が増えれば、それだけで仕事への向き合い方も変わる。「コスメは誰のもの?」という問いへの、私たちなりの答えがここにあります。
※出典元:メンズコスメ市場 2024年 約1,655億円規模に拡大(富士経済調べ、日本経済新聞 2026年1月)
⑤ 「整える」ことの本質

「整えること」は、ルッキズムとは反対のところにあると思っていますが、外見で人の価値を決めるのがルッキズムなら、身だしなみを整えることは、相手への敬意であり、自分らしさを表現することです。その選択の主役は、あくまで自分自身です。
整えることは、自分を大切にすることでもあるし、相手への気持ちを示すことでもあるし、自分を表現することでもある。大切なのは、それが「やらされている」のではなく、「自分でそうしたい」という気持ちから来ているかどうかだと思います。コムニコスが届けたいのは、「整えることで、自分をもっと好きになれる」内側から滲み出る自信と自己効力感です。
「整えること」の価値を信じているからこそ、外見至上主義の歪みを放置するわけにはいきません。プロとして自分らしくいられるための正しいヘアメイクを伝え続けること、誰でも使えるジェンダーレスコスメを届けること――それがコムニコスの、ルッキズムに向き合う方法なのです。
