ジャーナル#11 午年
― 午年、馬と武士に学ぶ身だしなみ ―
目次
- ① 馬は、「整っていない」と走れない?!
- ② 武士の時代
- ③ 身だしなみの正解は、自分の中にある
- ④ 現代の戦場は、人前にある
- ⑤ 午年のはじまりに
2026年。干支は午年ですね。
年賀状や新年の挨拶で、馬のモチーフを目にしてきましたが、「走る年」「前に進む年」と言われる午年。馬といえば、その疾走するイメージが真っ先に浮かんできます。
競走馬の姿を生で見たことがありますが、あのときに感じたのは、速さよりも先に「綺麗で美しい」ということでした。
速く走る馬に、「静かに整えられた美しさ」を感じずにはいられませんでした。
そこで、午年のはじまりに、馬と、そして武士の姿から、あらためて「整える」という行為の意味を考えてみたいと思います。
① 馬は、「整っていない」と走れない?!

馬は生き物です。同時に、人とともに役割を担ってきた存在でもあります。
蹄が欠けていれば走ることはできません。毛並みが荒れていれば、体調を疑われます。鞍や装具が合っていなければ、馬だけでなく、乗る人の安全にも関わります。
馬を整えることは、見せるためでも、誇示するためでもありません。役割を果たすため。安全のため。信頼のため。
その積み重ねの先に、安定した走りがあり、結果として美しさが生まれます。
整えるとは、走る前の準備なのです。
② 武士の時代

午年に馬を思うとき、もう一つ浮かぶのが、武士の時代。白い品格ある馬に跨り、海辺を颯爽と走る松平健さんの将軍姿を思い出します。
武士にとって馬は、単なる移動手段ではなく、戦場で命を預ける、極めて重要な存在でした。だからこそ、馬の手入れは「世話」ではなく、自らの責任として行われていたそうです。
蹄を整えること。毛並みを揃えること。装具を点検すること。それらはすべて、役割を果たすために必要な準備でした。
そして、整えられていたのは、馬だけではありません。
武士自身もまた、身だしなみを厳しく管理していました。髪型、装束、鎧、刀。これらは、装飾ではありません。動くため。誤解を招かないため。秩序と安全を保つため。威厳を保つため。
身だしなみの乱れは、心の乱れや規律の欠如と結びつけて考えられていました。武士の身だしなみは、信頼を失わないための最低限の条件だったそうです。
美しさは、目的ではなく、役割を果たすために整えた結果、機能的な美しさが現れたのです。
③ 身だしなみの正解は、自分の中にある

ある企業の研修ではこんな質問を受けたことがあります。
「身だしなみを整えるって、何を基準に考えればいいんですか?」
髪型の正解がわからない。メイクはどこまでが適切なのか。清潔感とは、何をもって判断されるのか。
身だしなみ改定等、企業の方針で身だしなみの「自由化」が進みました。同時に、「迷いやすいもの」にもなっています。
コムニコスは、こう考えています。
「整っている」とは、
気負わず、盛らず、削りすぎず、ニュートラルな自分でいられる状態のことです。
それは、完璧であることでも、誰かの基準をすべて満たすことでもありません。
自分を大きく見せようともしない。小さく隠そうともしない。
その場に立つ理由が、自分の中ではっきりしていること。
役割を理解し、引き受ける覚悟ができていること。だから、立ち姿に迷いが出ない。
すなわち、その場に居ることを、自分が許可できている状態なのかもしれません。
状態が整ったとき、
「自分らしく居られる」という感覚で、自分らしく振る舞えるのではないでしょうか。
④ 現代の戦場は、人前にある

令和の時代、戦場はありませんが、人前に立つ場面は確実に増えています。
仕事、接客、教育、SNS。私たちは日々言葉を交わす前に、「印象」を交わしています。その初めにあるのが、身だしなみです。
身だしなみとしてのヘアメイクは、「別人になる」ことでもなければ、「マイナスな印象をプラスに変える」行為です。
自分らしくいられることこそ、最強の身だしなみです。
社会人として、画一的な正解に合わせることでも、流行を追うことでもありません。
自分の役割を理解し、その場に立つことに自信が持てる状態。迷いなく前に出られる状態。
整うとは、自分の足で自分らしく居られる、そんな確信のできる準備なのだと思います。
⑤ 午年のはじまりに

コムニコスが、企業研修で身だしなみについてお伝えするとき、私たちが大切にしていることの一つに「与えられた役割を果たせる自信を身だしなみからつけること」
髪が整っていること。肌が清潔であること。眉が整っていること。それによって自分らしい自分でいられる。
誰かより目立つためのものではありません。自己表現だけのためでもありません。
自分と周りに安心を与えるため。役割を果たすため。安全を守るため。信頼を損なわないため。
午年のはじまりに、馬と武士の姿から、あらためて「整える」という行為の意味を考えてみました。
新しい一年、あなたは何のために整えますか?
